旅先で出会ったフランス人
JCBで予約したホテルのチェックアウト時。 日本から持参した「6ヶ国語旅行会話集」を見ながら、ホテルのおじさんにフランス語で「快適でした。ありがとう。」と伝えた。先方、大変喜んでくれ「ちょっと待ってて」と、奥から小さなエッフェル塔の置物を出してきて、私にプレゼントしてくれた。
一般に、フランス人は英語が大嫌いらしく、異常なほどにフランス語を誇りにしている。この時も、日本の青年が、英語ではなくフランス語をチョイスし、本を見ながらではあるが、健気にフランス語を使うことが、先方にとっては感激この上ないことだったのだと思う。 他方、プレゼントを受け取った当人の私は、つい一昨日までインドにいた身である。そして、フランス人とのファーストコンタクトがこの出来事。インドで自身に張った外国人バリアーを、一挙に溶解せしめるほどの事件だった。 不覚にも涙が。 「人は優しくされると、優しくなれる。」心からそう思えた、何とも温かい出来事だった。
ちなみに、この時大活躍した「6ヶ国語旅行会話集」の末路を。 実は、その時、私のフランス語は通じず、結局、ホテルのおじさんに「何て言ったんだ。本を見せてみろ。」と言われ、本を見せてのコミュニケーション成立であった。そして、それを受けてのおじさんのフランス語についても、「ちょっと待ってて」ですら、私の想像力の範囲内での解釈に過ぎず、これを介在してのコミュニケーションは不可と判断し、以降、残念ながら決して利用することはなかった。